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第二歌集です。
生き延びたいひとに読んでほしい。
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| 2016.07.04 Monday | - | - | - |
 桜井凛香さんの。
桜井凛香さんの第一歌集「人生につかれたことあります。」を読みました。
うつ病の苦しさをリアルに描いた第一歌集。
気持ちの波を、そのまま手づかみで差し出されたような、
そんな息づかいを感じる歌集です。

人生につかれたことあります。
人生につかれたことあります。
桜井 凛香

手触りのよい装丁に、驚きました。
つるっとすべっていくような本とは違う、少しひっかかる手触り。
引き止めて、という声のようで、せつなく感じました。

胸や目に刺さった歌を、抜き出してきます。
青い紙に白い字の、叫びです。

なによりもマッサージ椅子が欲しいなどという生き方はたぶん間違い

体重がまた増えているどうでもいい自分をどこかで楽しんでいる

マッチ売り少女のように命の火無駄に燃やしてしまった寒くて


自分を大切にしようって、何度も言い聞かせてきました。
でも、自分の可愛がり方なんて、ほんとは知らない。
がんばらないでいようって、何度も念じてきました。
でも、どこまでがんばらないでいていいのか、分からないじゃない。
いつかどこかでリミッターが外れても、ちゃんと気づける保証なんてない。

大丈夫、大丈夫って自分を励ます毎日。
わたしも、自分のリミッターがどこにあるのかなんて分かりません。
「間違い」じゃなくて、「たぶん間違い」な生き方。自信ないよ。

明日のない今日ならどんなにいいだろう今日が世界の終わる日ならば

あの角を曲がったところではねられて死ねたらいいと毎朝思う


自分の人生は、自分で終わらせるというのが理想でした。たぶん今も。
いくつの頃からだっただろう。
●●歳になったら、人生終わらせようと、決めていました。
長生きしたいだなんて思わない。
いちばん幸せなときに死にたい。もしくは殺してほしい。
究極に傲慢で最低で身勝手で、ばかみたいなお願いです。

雨の日は飛び降り自殺が少ないと語る青年今日は晴天

それでもわたしは生きているし、それどころか、精神科医を目指してしまう。
冷静で、割り切れる性格だし、うつ病を、心の病だとか心の闇だなんて言わない。
脳内物質の問題ですと言うだろうし、これからもっと効く薬が出てくると思ってる。
でも、どうしてもどうしても死にたいひとを止めるのは、薬じゃないと思う。
追いかけて、抱きしめてくれるひとが、いますように。いて。いてほしい。

自らの手で切り裂いた傷口の縫い目をなでるときはやさしく

下界ではまだまだ夜はこれからの午後九時消灯天国の掟

青空の破片がわたしの上にだけ降りそそぐのは聖なるお告げ


凛香さんの入院中の歌は、少し落ち着いています。
病棟にただようぬるい空気は、独特なのかもしれません。
笑顔がふわふわ浮いてしまう。

死にたいと思い続けた世に子供産むなど無責任すぎるだろ

遺伝子を残す意欲を欠いているわたしは命として未熟者


それからまた、苦しい歌。
この二首が、いちばん刺さった気がします。
浮き上がっては沈み、浮き上がっては沈み。
もう泣いたりしないけど、ひとりでいると、突然苦しくなるのは、
なにかが足りないからだと思う。

ブランコに二十年ぶり乗ってみるもう雲までは届かなかった

朝刊を届けてくれる少年の長いまつげにみとれる夜明け


なにが足りないんだろ。世界に浮き上がりながら手探りします。
この二首が含まれる章「覚醒前夜」だけは、白い紙に印刷されています。
世界の輪郭に気づいたような、やさしい歌が並ぶ章。
また壊れてしまうかもしれないけれど、一歩、進めるのかもしれない。
進みたいと、願うのならば。

「精神科の待合室のあなたのとなりに」と帯に書かれています。
だれかのとなりに、そっと置きたい、歌集です。
| 2006.12.09 Saturday | 短歌 | comments(2) | trackbacks(0) |
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| 2016.07.04 Monday | - | - | - |
Comment
お久しぶりです。覚えてくださってますか?笑
なんかこの文読んで泣きそうになりました◆◆凄い色んなもの考えさせられますね。。
まひる
こんばんは、あんさん。
もちろん覚えてますよう。
遊びに来てくださって、ありがとうです。

一気に書いた文章です。
なにか伝わったのなら、うれしいな。









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