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第二歌集です。
生き延びたいひとに読んでほしい。
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| 2016.07.04 Monday | - | - | - |
 窓、その他のこと。

3月2日、内山晶太さんの歌集『窓、その他』(六花書林)の批評会にお邪魔してきました。
大勢の方が集まり、内山さんへの愛が感じられる批評会でした。

あらためまして、内山さん、おめでとうございます。
また、スタッフの皆様、お世話になりました。
ほんとうに楽しかったです。

さて、批評会前にTwitterで、好きな歌を紹介させていただいていましたので、
少しまとめておきます。



さみしさも寒さも指にあつまれば菊をほぐして椿をほぐす
                  内山晶太『窓、その他』

冬のひかりに覆われてゆく陸橋よだれかのてのひらへ帰りたし

花摘みて花に溺るるたのしさをきょう生前の日記にしるす

 「花に溺るる」「生前の日記」という言葉にときめく。
 「たのしさをきょう」をひらがな書きにしたことで生まれる視覚のリズムもいい。

わたくしに千の快楽を 木々に眼を マッチ売りにはもっとマッチを

 この歌が今はいちばん好きだと思う。
 「千の快楽を」とおおらかに官能的に始まりながら、
 「マッチ売りにはもっとマッチを」に落とし込まれる感情に、泣きそうになる。

ライターの炎ふたつを重ねおり抱かぬままに人と別れて

 あたたかくも寂しい光景と思わせて、実際はライターをふたつ出している様子は怖い。
 穏やかに見せかけて、「抱かぬまま」の人に対する思いが暗さもはらんでいる。

スプーンの銀の花模様まぶしさに押し切られ特にゆくところなし

咳すれば肺に銀貨の散るここちせりけりすればするほど貯まる

 「肺に銀貨」という表現にやられたのだけど、よく考えれば、なんて枯れた咳をするのだろう。

にんげんのプーさんとなる日はちかく火の近く手を伸べてぼんやり

 やっぱり枯れている……。「ちかく」「近く」のリフレインが心地いい。

ひよこ鑑定士という選択肢ひらめきて夜の国道を考えあるく

 「ひよこ鑑定士」がこのまま連作になればいいのにと、そこにばかり注目しそうになるけど、
 「考えあるく」の落とし込み方が好きだって気づいた。

なつかしさというほかになし眉間よりいくつかの波紋ひらくゆうべを

高みへと吹き上げらるるはなびらへ手を振りながらなお生は冷ゆ

 この「はなびら」がどういう状況で吹き上げられているのかよくは分からない。
 風に? お祝いの席?
 何にせよ、視覚的に美しい状況と、能動的に手を振る姿、
 「なお生は冷ゆ」の冷静さに息をのむ。

死ののちのお花畑をほんのりと思いき社員食堂の昼

 「お花畑」「ほんのりと」と思わずつっこんでしまいそうになる可愛い言葉を、
 「死」と「社員食堂の昼」でサンドイッチ。こわかわいい。

壊れそう でも壊れないいちまいの光のようなものを私に

 「いちまいの光」いいなあ。
 でも、わたしが好きなのは、ここで「あなたに」とかじゃなくて、「私に」と持ってきているところです。
 「わたくしに千の快楽を」の歌もだけど、私にわたくしにとばんばん出してきているの好き。
 それでいて自分だけ見ているのではないとこ。

批評会で、司会の田中槐さんが最後に取り上げた歌を、わたしも最後にあげておきます。

どうであれ陳腐を恋えりあたたかくかさねるための手がここにある

「陳腐」を愛おしく思えることがどれだけ大切か。
好きだな。

| 2013.03.04 Monday | 短歌誘拐 | comments(0) | trackbacks(0) |
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| 2016.07.04 Monday | - | - | - |
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